夢かと思うような不思議な懐かしさ
都内での展覧会が始まった。いわゆる写真展には違いないのだが、写真を販売する為に展示している。
写真展といえば、カメラメーカーなど写真関係の企業が運営するサロンというのが一般的だが、
それ以外に、写真を美術品として販売するために展示する、写真専門の画廊というのがたくさんある。
写真家、カメラマンと言ってもその収入源はさまざまで、
私の場合、撮影料、原稿の使用許諾料などの印税よりも、
作品としてのプリントを販売することが、大きな割合を占めている。
「写真を売る」。それ自体はなじみが薄い。
印刷物とどう違うのか、どのようにして流通しているのか、すぐには理解できないと思う。
写真には、「オリジナルプリント」と言う言葉がある。
芸術家自身が、納得のいくものだけを提供することで、印刷物などの量産される複製と区別される。
つまり、オリジナルプリントだけが作品であり、ほかのものは作品を紹介するための情報源のようなものだ。
美術作品として仕上げられた写真には、多様な技法があるが、それぞれ本当に美しい。
そして、いろいろなギャラリーで販売されている。
では、「オリジナルプリントは一点しかないのか?」という疑問が沸いてくるが、
そのスタイルは作家によってさまざまだ。
まれなケースとして、制限なく製作される場合(オープンエディション)もあるが、
工程の複雑な美術品としてのプリントを大量に製作することは難しく、
版画のように限定番号(エディションナンバー)で決まった枚数だけ製作されるのが通例だ。
そして価格。一般的な美術品に倣って、総製作数が少ないほど高くなる。
私の作品の場合、販売枚数は20~25点。価格は限定番号で決まっているので、
同じ写真でも販売が進み、残りが少なくなると高くなる。
今回の展示では5万円から。受け止め方はそれぞれだが、このギャラリーの平均的な値段だ。
さて、この写真は北海道の工場を撮影したもの。車で移動中に偶然見つけて撮影した。
今ではどのあたりの場所なのかも全く分からない。夢だったのかと思うような、不思議な懐かしさがある。
この作品はオープンしてすぐに売約になったが、6月までの会期にどれくらいの作品が売れるかは、私にも分からない。
展示総数は39点。私としては多いほうだ。